エビでタイをぶった切る

エビデンスをもとに台頭する根拠レス上級医をぶった切るブログ。

RCTか、観察研究か

「RCTより観察研究が有用に思っている」

 

は?

 

 

スタイル上、ぶった切るが、

上記の発言は非常に勉強家で尊敬できる後輩の発言であり、

個人的に嫌いなヤツではない。

 

「RCTの結果を実臨床に当てはめようとすると、除外基準に当てはまって、適応できない。

観察研究だと、実際に適応したい患者も含まれる研究が多いから、”有用だ” 」

ということだった。

 

そもそも

RCTと観察研究は、概念が違う。

言わんとすることは、分かるが不正確。

不正確さこそが分かっていない証拠。

 

観察研究の対比は、介入研究。

RCTではない。

 

RCTは介入をどうするかという、介入の方法論で、

コントロールを置くのか、置かないのか。

その割付は、ランダム化するかしないか。

 

コントロールなしはSingle-arm と言われ、

観察研究とどう違うのかという疑問も生じるが、

一般臨床の範囲外のことなら、やはり介入。

 

 

RCTならコホート研究でも間違いはないが、

混乱を招くから、コホート研究と言ったら、ふつうは観察研究。

 

 

観察研究は、

コホート研究、ケースコントロール、横断研究。

あとは特殊なタイプ。ネステッドコホートやら、ケースクロスオーバー。

 

 

比較

RCTと観察研究を比較ということ自体、オカシな話だが、

 

RCTはそもそも治療の有効性を調べることが多いから、

 組み入れ基準は厳格。

 怪しい輩ははじく。

実臨床の患者はもっとイロイロで、除外基準に合致して、ハジかれる。

 

観察研究は、イロイロな患者の全体的な効果を見るわけで、

 組み入れ基準は緩いことが多い。

実臨床の患者も、参加できる研究だったでしょう、ということが多い。

 

RCTの結果は、患者に適応できず、

観察研究の結果は、患者に適応できるのか?

 

そういうことではない。

 

RCTで得られたのは、足並みそろった患者における、平均的効果。

 個人個人は分からんけど、

 足並みそろったこの人たちには、平均でこれくらい効くでしょ、という値。

 

観察研究で得られたのは、いろんな人が入ってて、

 個人個人は効くか効かんか知らんけど、

 全体的には、平均でこれくらい効くでしょ、という値。

 

平均をとった範囲が広いか狭いかの話で、

その結果が目の前の患者に適応できるかは、別問題。

 

観察研究は、ヨケイな影響があるから、結果に注意(残存交絡)

比較的元気で、効きそうな人に薬を投与したり、

死にそうな人にはもうこれ以上いいかと治療しなかったり。

めちゃくちゃ有効な結果が出る。

恣意的な結果を出すのは難しいことではない。

低俗な学会発表の典型。

 

論文の結果は、どんな人から得られて、目の前の患者にも合うのか、合わないのか、

有効な方向で合うのか、効果は減ってしまいそうなのか。

論文より、合併症が増えそうなのか、減りそうなのか。

そういうことを考えろということ。

 

クレメジンという試金石

慢性腎臓病の紹介を受けることが多い立場で、常日頃思うこと。

 

クレメジンはよい試金石という話。

患者病態のではない、医師の腎不全に対する理解の。

 

 

名前は有名で、非腎臓系Drでも知っている薬。

商業戦略は旨い。

”球状活性炭” では売れませんでしょう。

 

インドキシル硫酸などの尿毒症物質を吸着することで、

腎不全の進行を予防するという哲学。

 

尿毒症物質とCKDは所詮、

ニワトリと卵な感もしなくもないが、主張には論理整合性はある。

 

しかしながら、

活性炭で除去できる量で、臨床的に差が出るほど効果はあるのかね?

という印象。根拠はない。

 

実際問題、問題はその有効性。

RCTで、有効性は示されず。

最近の論文だと下記。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25349205

 

もちろん非有意の研究で言えるのは、「有効だとは言えない」

「無効だともいえず」、一部有効な患者が含まれている可能性はある。

 

しかし

「一部有効な患者」がいたところで、特定する手段はないので、

「臨床的には無効」と判断するのが正しい。

 

「この人はハイリスクだから」と、

有効性が否定的な論調の薬を出す輩もいるが、論点が違う。

 

「ハイリスクをどう評価するか」が分からず

「ハイリスクだと有効」とも示されていないので、

「ハイリスクをことさら主張する」のは神か、馬鹿かのどちらか。

 

有効だとしても?

仮に多少の有効性があったり、一部の患者に有効だったとしても・・・

やはりその臨床センスは疑問。

 

・薬剤の形状

・内服タイミング

・薬価

 

クレメジンはそもそも飲みにくい。

炭を飲めと言われてもご免。

粉で2g。1日3回。カプセルなら30C。

知らずに、3Cとか6Cで出しているアホも見たことがあるが、

減量すれば、効かない薬もなお効かない。

 

内服は食間。食後2時間後が普通。しかも分3.

ほかに分3の薬があれば、合計で分6.

眠剤があれば、夕食後2時間と眠前は被らないか?

結局いつ飲むか、わけわからなくなった患者は一緒に飲む。

一緒に飲めば、ほかの”有効な”薬も吸着される。

ご苦労様。

 

そのくせ薬価は高い。

後発で58円/g、一日350円。

 

有効性と優先順位が高ければ、仕方ないが、

この薬は、何剤目か?

 

科学的な言い方をすれば、ICERはいくつか。

基本0になるでしょう。残念。

追加の価値はない。

 

クレメジンを出す医者は腎臓を分かっていないという話。

非専門の限界もあるので、出すことは非難しない。

頑張っているなとは思う。

さっさと紹介しろという方が本音。

 

看板が腎臓で、処方していたらヤブ。

 

自分が患者なら、

クレメジンを処方するようなDrに腎臓はみてもらいたくない、

という個人的見解。

 

 

透析患者のintactPTHの至適範囲とは

60-240

そんなことはガイドラインに書いてあり、わざわざブログを読むまでもない。

数字を知りたければ、ガイドラインを読めばいい。

 

きっかけは、

一生懸命にintact PTHをみて、ビタミンDの調整をしている医師を見かけたことだ。

 

一生懸命であることは素晴らしい。

しかし知識が伴わなければ、その意味はない。

 

研修医のレベルであれば、ガイドラインの60-240をキッチリ守り、

投薬調整していれば、合格どころか素晴らしい成績といえる。

 

透析の管理者としては、落第点。

 

目撃したのは、

「PTx後のintactPTHを見て、intact PTHが低値(<60)だから、ビタミンDを減量」

である。

逆もまた真で「intactPTHが高くなると、機械的ビタミンDを増量」

 

知識がないと応用が効かないことの表れ。

 

当然、ビタミンDパルス療法ですか・・?と聞いても「きょとんとした顔」

パルス療法と内服の差も分かっていない。

 

数値を治療し、治療している病態が見えていない。

 

ガイドライン

もっとガイドラインを把握した者は

P>Ca>intacPTHの優先順位であるから、

「高Pの患者のintact PTHをビタミンDで管理するとは、おろかな」と。

 

この理解もまた浅く、ガイドラインが少し改正され、

Ca>P>PTHとなれば、今後はCaと声高に叫び、

PTH>Ca>Pとなれば、 PTHと声高に叫ぶ。

 

診療と予後の関係がそんなにコロコロ変わるのか?

 

診療行為と予後の効果は一定。

しかしその程度は神のみぞ知る。

研究毎に振れ幅や研究の限界があるので、ガイドラインは変わりうる。

そして新しい薬が登場すれば、治療戦略も変わる。

 

P,Ca,intactPTHのいずれも患者の栄養、骨代謝の実態を垣間見る指標。

 

どや顔で、

whole PTHやBAP、TRAP5Bがどうこういう人もいるが、

実態を垣間見る指標にすぎない。

高度なことをしているように見せるのは立派。

枝葉末節への執着は、本質が見えていない証拠。

 

治療すべきは実態で、それをどう見るか。

一般診療で測定できるP,Caを指標とするのは当然で、

予後と関連が強いもの、効果量の大きいものを優先するのは当然。

 

結果、高Pの治療が最優先。

高Caも予後と関連。

intactPTHはそれに劣る。

 

Pの取りすぎ、食事のとらなすぎ、は放置して、intact PTHの管理?

やらないよりマシだが、貴重な時間と医療資源の無駄遣い。

 

医者の仕事は患者の予後を改善すること。

大きな問題を残したまま、小さな問題に一生懸命取り組むのは、本末転倒。

 

ガイドラインの60-240に異論はないが、

別に300だからと、あわてて治療方針を変更するのはナンセンス。

 

エテルカルセチドにビタミンDパルスにモリモリにして、

intactPTHが下がらないと騒ぐことへの警鐘。

 

いくら数字とにらめっこしても、

副甲状腺の過形成を疑う姿勢や、エコーで線種が有無を見る発想は沸かない。

 

それは専門医の診療ではないという、本日の毒でした。

 

 

 

抗血栓療法中の腎生検は可能か

今日は腎生検におけるハイリスク患者の話。

基本的には、出血が主だった合併症として認識されているかと。

 

きっかけは、

Afがあり、ワルファリン内服中の慢性糸球体腎炎の患者を腎生検はどうかと紹介したこと。

「ワルファリン内服中でハイリスクですから、経過を見ろ」と返事。

 

アホかと。

返書のレベルが低い。

 

腎生検の要否をある程度分かる者が紹介しているわけなので、

ワルファリン内服でリスクが多少あることは百も承知。

腎生検をやらないにしろ、

「10年、20年の透析導入リスクがこの程度なので、生検は見送りました」

「~~故、治療介入余地が少ないので、見送りました」等が妥当な返事。

 

腎生検のリスク評価

振り返って、腎生検の合併症リスクは、何もワルファリンに限った話ではない。

 

血小板数やら凝固異常、血圧コントロール、デブ。

さまざまな要素があり、

これらをうまく盛り込んだ予測モデルがあれば便利と思い、

と調べてみた。

 

しかし、納得いくものは見当たらなかった。

よく考えてみれば、

腎生検の実施数がそれほど多いものではなく、合併症に至ってはさらに少ない。

予測モデルを作るのは、かなり難しいのだろう。

 

Pubmed Search term:(risk assessment) AND(renal biopsy)

片手間で書いているブログで、系統的検索からは程遠いことは、

ご容赦いただきたい。

 

比較的目的とあった情報は下記だ。

Simple risk score for prediction of haemorrhagic complications after a percutaneous renal biopsy.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28419667

 

P: 1205名の成人の経皮的腎生検患者

O:Major complication(輸血等の薬物介入、エンボリ、手術)

ステップワイズの多変量ロジスティック回帰で解析。

期間は2008-2016年のレトロスペクティブ。

 

”medical invervention such as transfusion”ってなんだよ、

アドナを入れたら、それもMajor complicationか?

曖昧だなと突っ込みたくなるが、目をつぶる。

 

アウトカムは、348名に合併症があり、

309名(26%)にminor complication。

39名にMajor complication。

 内訳は

 1名は血尿、38名が輸血を要する腎周囲血種、

 2名が腎摘、1名が死亡。

 死因は腎的手術後の虚血性心疾患とのこと。

抗凝固を再開した患者で、6日後に腎周囲の出血と重度の貧血を呈しERに来院した1名。

 

 

冒頭の抗血栓療法については、35名。

ワルファリンは96時間前に止め。抗血小板薬は1週間前に止め。

入院でヘパリンブリッジを行い、8ないし12時間前にヘパリン止め。

この35名がどういう転機かはわからないが、最低一人はERの人だろう。

 

結局、major complicationと関連があったのは

血小板減少<150/mm3 OR 7.75

血清Cre 1mg/dl毎に OR2.54 の二つ。

 

リスクスコアに含まれたのは、

・エコーでCKDっぽい所見 3点

・BUN>50 2点

・Hb<11g/dl 2点

・Plt<150/mm3 3点

 

で?

上記4項目でリスク評価を行おうと思ったなら、専門性をマジ疑う。

そもそもこの論文は、腎生検をやった人を対象とした研究で、

潜在的にこの人ヤバそうという人は、入っていない。

 

この結果をもって、腎生検をやるかどうかの判断には使えない。

やった後に、この人出血するかも?の評価に使えるツール。後の祭りだ。

 

血栓療法中の患者に腎生検して、34名はたいしたことなかったようだ。

きちんとヘパリンブリッジすれば、腎生検はできるという印象。

ただ再開時期は注意がいるのと、生検から時間を空けての出血に注意ということ。

 

生検後の抗血栓薬の中断期間が長くなる可能性がある。

動脈塞栓症で死にかけたとか、肺塞栓症後で時間が立っていないなど、

塞栓症リスクの高い人は、腎生検を見送ったほうがいいだろう。

ほとんど洞調律のpAfとかなら、それほどリスクとはならない可能性がある。

 

専門をうたうなら、それくらい判断しろよ、という話でした。