透析患者のintactPTHの至適範囲とは
60-240
そんなことはガイドラインに書いてあり、わざわざブログを読むまでもない。
数字を知りたければ、ガイドラインを読めばいい。
きっかけは、
一生懸命にintact PTHをみて、ビタミンDの調整をしている医師を見かけたことだ。
一生懸命であることは素晴らしい。
しかし知識が伴わなければ、その意味はない。
研修医のレベルであれば、ガイドラインの60-240をキッチリ守り、
投薬調整していれば、合格どころか素晴らしい成績といえる。
透析の管理者としては、落第点。
目撃したのは、
「PTx後のintactPTHを見て、intact PTHが低値(<60)だから、ビタミンDを減量」
である。
逆もまた真で「intactPTHが高くなると、機械的にビタミンDを増量」
知識がないと応用が効かないことの表れ。
当然、ビタミンDパルス療法ですか・・?と聞いても「きょとんとした顔」
パルス療法と内服の差も分かっていない。
数値を治療し、治療している病態が見えていない。
ガイドライン?
もっとガイドラインを把握した者は
P>Ca>intacPTHの優先順位であるから、
「高Pの患者のintact PTHをビタミンDで管理するとは、おろかな」と。
この理解もまた浅く、ガイドラインが少し改正され、
Ca>P>PTHとなれば、今後はCaと声高に叫び、
PTH>Ca>Pとなれば、 PTHと声高に叫ぶ。
診療と予後の関係がそんなにコロコロ変わるのか?
診療行為と予後の効果は一定。
しかしその程度は神のみぞ知る。
研究毎に振れ幅や研究の限界があるので、ガイドラインは変わりうる。
そして新しい薬が登場すれば、治療戦略も変わる。
P,Ca,intactPTHのいずれも患者の栄養、骨代謝の実態を垣間見る指標。
どや顔で、
whole PTHやBAP、TRAP5Bがどうこういう人もいるが、
実態を垣間見る指標にすぎない。
高度なことをしているように見せるのは立派。
枝葉末節への執着は、本質が見えていない証拠。
治療すべきは実態で、それをどう見るか。
一般診療で測定できるP,Caを指標とするのは当然で、
予後と関連が強いもの、効果量の大きいものを優先するのは当然。
結果、高Pの治療が最優先。
高Caも予後と関連。
intactPTHはそれに劣る。
Pの取りすぎ、食事のとらなすぎ、は放置して、intact PTHの管理?
やらないよりマシだが、貴重な時間と医療資源の無駄遣い。
医者の仕事は患者の予後を改善すること。
大きな問題を残したまま、小さな問題に一生懸命取り組むのは、本末転倒。
ガイドラインの60-240に異論はないが、
別に300だからと、あわてて治療方針を変更するのはナンセンス。
エテルカルセチドにビタミンDパルスにモリモリにして、
intactPTHが下がらないと騒ぐことへの警鐘。
いくら数字とにらめっこしても、
副甲状腺の過形成を疑う姿勢や、エコーで線種が有無を見る発想は沸かない。
それは専門医の診療ではないという、本日の毒でした。