抗血栓療法中の腎生検は可能か
今日は腎生検におけるハイリスク患者の話。
基本的には、出血が主だった合併症として認識されているかと。
きっかけは、
Afがあり、ワルファリン内服中の慢性糸球体腎炎の患者を腎生検はどうかと紹介したこと。
「ワルファリン内服中でハイリスクですから、経過を見ろ」と返事。
アホかと。
返書のレベルが低い。
腎生検の要否をある程度分かる者が紹介しているわけなので、
ワルファリン内服でリスクが多少あることは百も承知。
腎生検をやらないにしろ、
「10年、20年の透析導入リスクがこの程度なので、生検は見送りました」
「~~故、治療介入余地が少ないので、見送りました」等が妥当な返事。
腎生検のリスク評価
振り返って、腎生検の合併症リスクは、何もワルファリンに限った話ではない。
血小板数やら凝固異常、血圧コントロール、デブ。
さまざまな要素があり、
これらをうまく盛り込んだ予測モデルがあれば便利と思い、
と調べてみた。
しかし、納得いくものは見当たらなかった。
よく考えてみれば、
腎生検の実施数がそれほど多いものではなく、合併症に至ってはさらに少ない。
予測モデルを作るのは、かなり難しいのだろう。
Pubmed Search term:(risk assessment) AND(renal biopsy)
片手間で書いているブログで、系統的検索からは程遠いことは、
ご容赦いただきたい。
比較的目的とあった情報は下記だ。
Simple risk score for prediction of haemorrhagic complications after a percutaneous renal biopsy.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28419667
P: 1205名の成人の経皮的腎生検患者
O:Major complication(輸血等の薬物介入、エンボリ、手術)
ステップワイズの多変量ロジスティック回帰で解析。
期間は2008-2016年のレトロスペクティブ。
”medical invervention such as transfusion”ってなんだよ、
アドナを入れたら、それもMajor complicationか?
曖昧だなと突っ込みたくなるが、目をつぶる。
アウトカムは、348名に合併症があり、
309名(26%)にminor complication。
39名にMajor complication。
内訳は
1名は血尿、38名が輸血を要する腎周囲血種、
2名が腎摘、1名が死亡。
死因は腎的手術後の虚血性心疾患とのこと。
抗凝固を再開した患者で、6日後に腎周囲の出血と重度の貧血を呈しERに来院した1名。
冒頭の抗血栓療法については、35名。
ワルファリンは96時間前に止め。抗血小板薬は1週間前に止め。
入院でヘパリンブリッジを行い、8ないし12時間前にヘパリン止め。
この35名がどういう転機かはわからないが、最低一人はERの人だろう。
結局、major complicationと関連があったのは
血小板減少<150/mm3 OR 7.75
血清Cre 1mg/dl毎に OR2.54 の二つ。
リスクスコアに含まれたのは、
・エコーでCKDっぽい所見 3点
・BUN>50 2点
・Hb<11g/dl 2点
・Plt<150/mm3 3点
で?
上記4項目でリスク評価を行おうと思ったなら、専門性をマジ疑う。
そもそもこの論文は、腎生検をやった人を対象とした研究で、
潜在的にこの人ヤバそうという人は、入っていない。
この結果をもって、腎生検をやるかどうかの判断には使えない。
やった後に、この人出血するかも?の評価に使えるツール。後の祭りだ。
抗血栓療法中の患者に腎生検して、34名はたいしたことなかったようだ。
きちんとヘパリンブリッジすれば、腎生検はできるという印象。
ただ再開時期は注意がいるのと、生検から時間を空けての出血に注意ということ。
生検後の抗血栓薬の中断期間が長くなる可能性がある。
動脈塞栓症で死にかけたとか、肺塞栓症後で時間が立っていないなど、
塞栓症リスクの高い人は、腎生検を見送ったほうがいいだろう。
ほとんど洞調律のpAfとかなら、それほどリスクとはならない可能性がある。
専門をうたうなら、それくらい判断しろよ、という話でした。