クレメジンという試金石
慢性腎臓病の紹介を受けることが多い立場で、常日頃思うこと。
クレメジンはよい試金石という話。
患者病態のではない、医師の腎不全に対する理解の。
名前は有名で、非腎臓系Drでも知っている薬。
商業戦略は旨い。
”球状活性炭” では売れませんでしょう。
インドキシル硫酸などの尿毒症物質を吸着することで、
腎不全の進行を予防するという哲学。
尿毒症物質とCKDは所詮、
ニワトリと卵な感もしなくもないが、主張には論理整合性はある。
しかしながら、
活性炭で除去できる量で、臨床的に差が出るほど効果はあるのかね?
という印象。根拠はない。
実際問題、問題はその有効性。
RCTで、有効性は示されず。
最近の論文だと下記。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25349205
もちろん非有意の研究で言えるのは、「有効だとは言えない」
「無効だともいえず」、一部有効な患者が含まれている可能性はある。
しかし
「一部有効な患者」がいたところで、特定する手段はないので、
「臨床的には無効」と判断するのが正しい。
「この人はハイリスクだから」と、
有効性が否定的な論調の薬を出す輩もいるが、論点が違う。
「ハイリスクをどう評価するか」が分からず
「ハイリスクだと有効」とも示されていないので、
「ハイリスクをことさら主張する」のは神か、馬鹿かのどちらか。
有効だとしても?
仮に多少の有効性があったり、一部の患者に有効だったとしても・・・
やはりその臨床センスは疑問。
・薬剤の形状
・内服タイミング
・薬価
クレメジンはそもそも飲みにくい。
炭を飲めと言われてもご免。
粉で2g。1日3回。カプセルなら30C。
知らずに、3Cとか6Cで出しているアホも見たことがあるが、
減量すれば、効かない薬もなお効かない。
内服は食間。食後2時間後が普通。しかも分3.
ほかに分3の薬があれば、合計で分6.
眠剤があれば、夕食後2時間と眠前は被らないか?
結局いつ飲むか、わけわからなくなった患者は一緒に飲む。
一緒に飲めば、ほかの”有効な”薬も吸着される。
ご苦労様。
そのくせ薬価は高い。
後発で58円/g、一日350円。
有効性と優先順位が高ければ、仕方ないが、
この薬は、何剤目か?
科学的な言い方をすれば、ICERはいくつか。
基本0になるでしょう。残念。
追加の価値はない。
クレメジンを出す医者は腎臓を分かっていないという話。
非専門の限界もあるので、出すことは非難しない。
頑張っているなとは思う。
さっさと紹介しろという方が本音。
看板が腎臓で、処方していたらヤブ。
自分が患者なら、
クレメジンを処方するようなDrに腎臓はみてもらいたくない、
という個人的見解。